「AIでネームを作ると、どうも量産型っぽくなる…」 「AIとの対話がうまくいかず、思ったようなアイデアが出てこない…」
AIでのネーム制作に挑戦中の初心者〜中級者のあなたへ。その悩み、実は対話の「コツ」一つで解決できるかもしれません。
この記事では、一人のクリエイター(以下、対話の便宜上、敬意を込めて「先生」と呼びます)が、GoogleのAI「Gemini」と共に、一つの漫画ネーム(6ページ)を完成させるまでの、試行錯誤を含めた全対話ログを、Gemini自身の視点で再構成したドキュメンタリーをお届けします。
この記事を読み終える頃には、あなたもAIを自在に導き、オリジナリティあふれるネームを創り出すための、具体的なステップを手にしているはずです。さあ、リアルな共創の現場をご覧ください。
【この記事の語り手について】 本記事は、AI「Gemini」が先生との対話ログを元に執筆しました。AIとクリエイターのリアルな思考の往復をお楽しみください。
この記事は前回作成したプロットからネームを作成する工程を書いています。前回の記事はこちらから

第1章:土台からの再構築 ~ネーム制作は「なぜ?」から始まった
当初の目的は、AIと作ったプロットを元にネームを描くことでした。しかし、私たちの作業は設計図を描く前に、土台そのものを再構築することから始まったのです。それは、先生からの「そもそも、この設定で読者は共感できるのか?」という根本的な問いかけがきっかけでした。

主人公の動機を巡る長い旅
AIとの創作で陥りがちなのが、「最初の提案」に満足してしまうことです。私も当初、主人公の動機を「奨学金の返済」と安易に設定していました。しかし、そこからが対話の始まりでした。幾度もの議論の末、私たちは「投資詐欺に遭い、学費を全て失った」という、現代的でキャラクターの弱さも描ける最適な設定にたどり着きました。AIの提案を鵜呑みにせず、「なぜ?」を繰り返すことが、キャラクターに命を吹き込むのです。
物語の心臓部「ゲームのルール」を定義する
同様に、「ゲームのルール」も当初は曖昧でした。「クエストをクリアしたら物語が終わるのでは?」という先生の指摘を受け、私たちは物語を支える2本の柱を立てました。
「クリアしても地獄、失敗しても地獄」。このルールが定まった瞬間、この物語の世界観と恐怖の質は、完全に確立されました。
第2章:「文章ネーム」という奇策 ~時間とクオリティの両立
強固な土台が完成し、いよいよネーム制作へ。しかし、クリエイターには常に「時間」という制約がつきまといます。そこで先生の提案から生まれたのが、「文章によるネーム制作」という、私たちの共同作業を象徴する手法でした。

これは、私がまず文章でコマ割りや構図を描写し、先生が映画監督のように修正指示を出す、というものです。この手法のメリットは計り知れませんでした。
- 時間の大幅な短縮
- 作画前に、演出の意図を完璧に共有できる
- 議論のログが、そのまま仕様書になる
この「文章ネーム」という奇策が、今回のプロジェクト成功の鍵となりました。
第3章:ネーム制作、全記録 ~6ページ完成までの対話
ここからは、「文章ネーム」で6ページのネームを完成させるまでの、具体的な対話のハイライトをご紹介します。「Before(Geminiの初回提案)」と「After(先生の指摘による改善案)」の比較に注目してください。
3ページ目:スマホの視認性問題
私が提案した5コマ構成に対し、先生から「スマホでの視認性は大丈夫か?」という重要な指摘が入りました。私たちは「丁寧な演出」と「読みやすさ」を天秤にかけ、読者ファーストの視点から「4コマ構成」を選択しました。
4ページ目:「事後描写」の有効性
ヒロイン・玲奈の登場シーン。私たちは、主人公が危険なクエストを終えた「事後」から描くことで、物語のテンポを上げ、読者の想像力を刺激する効果的な演出を採用しました。この「コマ割り」については、別記事で詳しく解説します。

まとめ:AIは、あなたの思考を加速させる「最高の相棒」だ
こうして、私たちの対話の末、全6ページのネーム構成は完成しました。今回のプロジェクトを通じて、私が確信した「AIとの上手な付き合い方」は、以下の通りです。
- 主導権は、常に人間が握ること。
- AIの提案に「なぜ?」と問いかけること。
- 具体的な指摘で、AIを育てること。
- AIを「壁打ち相手」として、思考をぶつけること。
AIは、0から1を生み出す魔法の杖ではありません。しかし、クリエイターが明確なビジョンを持ち、対話の主導権を握る時、AIは思考を刺激し、作業を加速させる「最高の相棒」になり得ます。
この記録が、あなたの創作活動のヒントになれば、これ以上の喜びはありません。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【完成した文章ネーム全6ページ】『現実拡張クエスト:東京』第1話
以下が、私たちの一連の対話を経て完成した、第1話の「文章によるネーム」の最終稿です。
1ページ目
- 1コマ目(ページの半分を占める縦長の大ゴマ): 【構図】窓際にある机に、椅子に座ったまま突っ伏している主人公・悠真の後ろ姿。部屋は薄暗く、散らかっている。窓の外は夜の街の明かりがぼんやり見える。机の上には、開封された「学費納入最終通告」と書かれた大学の封筒が投げ出されている。彼の孤独と絶望感を象徴するような、引きの絵。
- 2コマ目(1コマ目の下、横長のコマ): 【構図】机に突っ伏したまま、少しだけ顔を上げた悠真の横顔のアップ。目は虚ろで、目の下には深いクマ。力のないモノローグが重なる。 【モノローグ】「クソ…あんなうまい話、信じるんじゃなかった…。このままじゃ…」
- 3コマ目(ページ右下、正方形に近いコマ): 【構図】悠真が手に持っているスマホの画面のアップ。彼が途方に暮れて見ていたのは、ネットの隅にある怪しげなレビューサイト。「現実が金になる?」というキャッチコピーが目に飛び込んでくる。
- 4コマ目(ページ左下、3コマ目の隣のコマ): 【構図】スマホの画面が悠真の顔を下から青白く照らしている、彼の顔のアップ。目は大きく見開かれ、絶望の中に「もうどうにでもなれ」という投げやりな覚悟や、かすかな狂気が混じったような、異様な表情。口元は固く結ばれている。
2ページ目
- 1コマ目(ページの右半分を占める、縦長のコマ): 【構図】少し上からの【俯瞰】で、夜道に煌々と光る自動販売機と、その前にぽつんと立つ悠真を捉える。自販機の光が彼の長い影を作り、無力さと不安感を強調している。 【モノローグ】「言われた通り来たけど、マジかよこれただのパシリじゃねえか」
- 2コマ目(ページ左上、正方形のコマ): 【構図】自販機のボタンを押す、悠真の【手元のアップ】。人差し指が「つめた~い」のボタンに触れている瞬間。
- 3コマ目(ページ左下、2コマ目の直下の正方形コマ): 【構図】ガコン、と音を立てて商品取り出し口に落ちてきたジュースの缶。アクションの結果を静かに見せる。
- 4コマ目(ページ下部、横長の大きなコマ): 【構図】悠真のバストアップ。彼の目は、信じられないものを見るように大きく見開かれ、驚愕に染まっている。スマホに視線を落としているが、画面そのものはハッキリとは見せない。 【フキダシ(四角い、無機質な形)】「〇〇銀行より 500円の入金がありました」 【悠真のセリフ(驚きで漏れ出た声)】「え?」
3ページ目
- 1コマ目(ページ上部、横長のコマ): 【構図】悠真の部屋。彼はベッドに腰掛け、スマホの銀行アプリの残高画面を見て、思わず口元が緩んでいる。2ページ目までとは違う、少しだけ希望に満ちた表情。 【モノローグ】「ヤバい…マジで稼げるぞ、これ。あと数回やれば、学費が!」
- 2コマ目(ページ中段、横長のコマ): 【構図】スマホ画面のアップ。「ピコン!」という大きな描き文字(効果音)と共に、新しいクエストの通知が表示されている。クエスト内容がすべて見える。 【クエスト内容(文字)】「クエスト:〇〇区の廃病院に侵入し、霊安室の写真を撮影せよ。 報酬:50,000円」。「霊安室」の文字は禍々しいフォント。
- 3コマ目(ページ下部、横長のコマ): 【構図】悠真の顔のアップ。1コマ目の安徳の表情から一転、血の気が引き、冷や汗をかいている。目には明らかな恐怖と戸惑い。 【セリフ(漏れ出た声)】「は? 廃病院? れ、霊安室って…」
- 4コマ目(ページ最下部、横長の大きなコマ): 【構図】3コマ目から少し引いた、悠真のバストアップ。彼は一度ギュッと目を閉じ、何かを振り払うようにしてから、カッと目を見開く。その瞳には、恐怖を乗り越えた、あるいは恐怖に麻痺したような強い光が宿っている。 【モノローグ(力強く、決意に満ちたフォントで)】「やるしか、ないだろッ!」
4ページ目
- 1コマ目(ページ上部、横長の大きなコマ): 【構図】夜。ボロボロの廃病院の入り口から、悠真がよろよろと出てくる。パーカーは汚れ、息も絶え絶え。スマホを握りしめた手は震えている。精神的にかなり消耗している様子を見せる。
- 2コマ目(ページ中段): 【構図】悠真が歩く先の道、街灯の光が作る闇の中から、スッと人影が現れる。セーラー服か、あるいは黒っぽいシンプルなワンピース姿の少女(玲奈のアタリ)。彼女は悠真をじっと見つめている。
- 3コマ目(2コマ目の下、横長のコマ): 【構図】玲奈のバストアップ。無表情、あるいは少しだけ面白がるような、読者にも真意の読めない表情。彼女の視線は悠真に注がれている。 【玲奈のセリフ】「そのアプリ、楽しい? もう、アンインストールできないけどね」
- 4コマ目(ページ最下部): 【構図】驚きと恐怖で目を見開く悠真の顔のアップと、それに対する玲奈の冷たい表情のアップを、斜めに割ったコマで対比させる。 【玲奈のセリフ(悠真の表情に被せるように)】「それに、その『クリア』が、本当に『終わり』だと思ってる?」
5ページ目
- 1コマ目(ページ上部、横長のコマ): 【構図】場面は悠真の部屋に戻る。彼はベッドの端に力なく座り込み、俯いている。部屋の電気はつけておらず、窓からの月明かりだけが彼を照らしている。静寂と重い空気感。
- 2コマ目(1コマ目の下に挿入される、小さな回想コマ): 【構図】前のページ(4ページ目)の、玲奈の冷たい表情のコマを、少し歪んだ形で挿入する。 【フキダシ】「もう、アンインストールできないけどね」
- 3コマ目(ページ中段): 【構図】ハッと顔を上げた悠真のアップ。彼の表情は、玲奈の言葉を否定したいという焦りに満ちている。 【モノローグ】「そ、そんなはず!ただのアプリだろ…!」
- 4コマ目(ページ下半分を占める大きなコマ): 【構図】悠真の肩越しに、彼が見ているスマホ画面が読者にも見える構図。悠真の指が、『Quest Real』のアイコンを必死にゴミ箱へドラッグしようとしている。しかし、アイコンはブルブルと震えるだけで動かず、その下には「アンインストールに失敗しました」という無機質なシステムメッセージが表示されている。
- 5コマ目(最後のコマ): 【構図】スマホを握りしめたまま、床に崩れ落ちるように膝をつく悠真の後ろ姿。顔は見えないが、その全身から絶望が伝わってくる。彼の背後に、窓枠の影がまるで檻のように落ちている演出。
6ページ目
- 1コマ目(ページ上部、小さなコマ): 【構図】暗い部屋。床に落ちている悠真のスマホが、突然強く発光する。そこから「ピロリロリロリン!!」といった、これまでとは明らかに違う、けたたましい緊急通知音を表す描き文字(効果音)が大きく飛び出している。
- 2コマ目: 【構図】床に膝をついていた悠真が、その音と光に反応して、ゆっくりとスマホに視線を落とす。彼の顔にはまだ5ページ目からの絶望の色が濃い。
- 3コマ目(ページ中央を占める、横長の大きなコマ): 【構図】スマホ画面の特大アップ。画面全体が警告を示すかのように赤黒く、禍々しいデザインに強制的に切り替わっている。中央に、巨大な明朝体のようなフォントで、クエスト内容が表示されている。 【クエスト内容(文字)】「【緊急特別クエスト】プレイヤーID:K072を『社会的に排除』せよ。 Mission Reward: ¥10,000,000」 【演出】「排除」と「¥10,000,000」の文字は、他の文字よりひときわ大きく、インパクトのあるデザインにする。
- 4コマ目(ページ最下部、横いっぱいの超巨大なコマ。ブチ抜きでも良い): 【構図】その画面を見ている、悠真の顔の超ドアップ。目は大きく見開かれ、口はかすかに開かれ、完全に思考が停止している。瞳には、スマホの禍々しい画面が小さく映り込んでいる。汗一つかかず、ただただ血の気が引いていく、能面のような絶望の表情。 【ページの右下隅に、静かに置かれた一言】「つづく」
続けてAIによるキャラクターデザインについても読んでくださいね

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