ChatGPTやGeminiの進化は目覚ましいものがありますね。この記事では、AIが生成した美しいイラストを魅力的な漫画に変える、フキダシとセリフの入れ方のヒントを私の経験からご紹介します。
AIで生成したイラストにどうやってセリフを入れたらいいか分からなかったり、フキダシの形や配置がなんだか素人っぽく見えてしまったり、キャラクターの感情に合ったフォントが選べなかったり。もし、あなたも同じように感じているなら、この記事がお役に立てるかもしれません。
この記事では、そんなお悩みを解決するため、AIで生成したイラストを読者が思わず引き込まれる漫画に進化させる、フキダシとセリフの基本から応用までを、一緒に見ていきましょう。
なぜAIで直接セリフを入れないのか

AIにイラストとセリフを一度に生成させられたら効率的ですが、現時点の技術では、なかなか思った通りにはいかないのが現実です。ここでは、私が実際に直面した問題と、その経験からたどり着いた最適なスタイルについてお話しします。
私が経験した現実
AIにイラストを生成させるとき、このフキダシの中にこのセリフを入れて、と一度に指示できたら、とても効率的ですよね。私も、もちろん試してみました。
ですが、実際にやってみると、現時点の技術では、なかなか思った通りにはいかないのが現実でした。

私が直面した具体的な問題
例えば、ChatGPTに日本語のセリフを入れるよう指示したところ、見事に文字が崩れて表示されてしまう、いわゆる文字化けの状態になることがありました。これは、AIが日本語フォントを正しく扱えないことがあるために起こる現象のようです。
また、たとえ文字が表示されたとしても、フキダシの形や大きさがバラバラだったり、キャラクターの顔に重なってしまったりと、意図しない場所にセリフが配置されてしまうことも頻繁にありました。これでは、せっかくのイラストの魅力を、逆に損なってしまいかねません。
だから私は分業スタイルを選びました
これらの経験から、私がたどり着いた現時点でのベストな方法は、AIと人間で、得意なことを分業するというスタイルです。
一つは、AIにはその圧倒的な画力を活かして、高品質なイラストを生成することに集中してもらうことです。
そしてもう一つは、人間が物語のキモとなるセリフやフキダシ、読者の視線を導くといった演出に関わる部分を、Clip Studio PaintやCanvaといった専門のツールを使い、後から丁寧に追加していくことです。
一見、手間に見えるかもしれませんが、この分業こそが、AIの能力を最大限に引き出しつつ、最終的な作品のクオリティを確実に高めるための、最も賢い方法だと私は考えています。
ChatGPTやGeminiと共作するセリフ術
イラストの次は、いよいよセリフです。ChatGPTやGeminiは、セリフ作りにおいても強力なパートナーになります。しかし、AIが作ったセリフをそのまま使うのではなく、少しのコツを加えて共作することで、キャラクターはもっと生き生きと輝き始めます。ここでは、私が実践しているAIとの対話方法をご紹介します。
AIが作るセリフのたたき台
AIにこういう場面のセリフを考えてとお願いすると、本当にたくさんのアイデアを出してくれます。これは、自分一人では思いつかないような表現のヒントになるので、とても助かります。
ただ、私の経験上、AIが最初に提案してくるセリフは、少し説明が長すぎたり、どこか教科書のような硬い言い回しだったりして、そのままでは使いにくいことも少なくありません。
人間の一手間でセリフに命を吹き込む
ここからが、私たち人間の腕の見せ所です。AIが作ってくれたセリフのたたき台を元に、キャラクターの性格に合わせて、より自然な言葉に磨き上げていきます。
例えば、長すぎるセリフは、このセリフをもっと短く、口語体にしてとお願いしてみます。キャラクターの性格が違うと感じたら、もっと内気な性格のキャラクターなら何と言いますかと尋ね直すのも良い方法です。AIとの対話を繰り返すことで、セリフはどんどん洗練されていきます。
目指すのは自然な会話
AIは便利なアシスタントですが、最終的にそのセリフに魂を込めるのは、作り手であるあなた自身です。AIとの共作は、時間のかかる作業に思えるかもしれませんが、この一手間が、読者を引き込む自然な会話を生み出すための重要な工程だと、私は考えています。
フキダシ配置の三大原則
セリフができあがったら、次はいよいよフキダシとして絵に乗せていきます。どのツールを使うにしても、フキダシの配置にはいくつかの基本原則があります。これを知っているだけで、あなたの漫画は格段に読みやすく、プロらしい印象になります。ここでは、私が特に重要だと考えている三つの原則と、Webtoonにおける考え方をご紹介します。
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原則1 読者の視線を導く
日本の漫画は、基本的にコマの右上から左下へと視線が流れるように作られています。フキダシもこの流れに沿って、右上から順に配置するのが大原則です。読者が無意識に、自然な順番でセリフを追えるように意識することが大切です。
もし、左側にあるフキダシを先に読ませたい場合は、右側のフキダシよりも明らかに高い位置に置くといった工夫が必要になります。このルールが崩れると、読者はどちらを先に読めばいいか混乱してしまいます。
原則2 キャラクターの表情を隠さない
セリフはキャラクターの言葉ですが、その感情を伝える最も重要な要素は、キャラクターの表情、特に目です。フキダシを配置するときは、キャラクターの目や、感情を表現している口元を隠してしまわないように、細心の注意を払う必要があります。
どうしても配置するスペースが限られている場合は、フキダシを少し小さくしたり、イラストの邪魔にならない背景部分に置いたりといった調整をします。キャラクターの感情表現を最優先に考えましょう。
原則3 フキダシの無い空間を恐れない
伝えたいことが多いと、つい画面をフキダシで埋め尽くしてしまいがちです。しかし、漫画において、フキダシのない空間、いわゆる間も大切な演出の一部です。
セリフとセリフの間に十分な空間があると、読者はキャラクターの表情をじっくりと見たり、言葉の余韻に浸ったりすることができます。沈黙や、言葉にならない感情を表現するためにも、この間は非常に効果的です。
補足 Webtoonにおける配置の考え方
近年人気のWebtoon、いわゆる縦スクロール漫画では、フキダシ配置の考え方が少し変わります。
一番の違いは、読者の視線が右上から左下ではなく、シンプルに「上から下」へ流れることです。
そのため、フキダシも時間経過に沿って、上から下へ順番に配置していくのが基本になります。フキダシとフキダシの間の空白は、ページ漫画以上に「間」や「テンポ」をコントロールする重要な要素となります。
左右の配置は、会話のキャッチボールをリズミカルに見せたい時や、キャラクターの立ち位置を表現したい時に効果的です。スマートフォンでの読みやすさを常に意識することが、Webtoonにおけるフキダシ配置のコツと言えるでしょう。
ツール別 フキダシとセリフの入れ方
ここからは、いよいよ実践です。理論が分かったところで、実際にツールを使い、フキダシとセリフを入れていきましょう。ここでは、私が普段使っている本格的な漫画制作ソフトから、スマートフォンで手軽に使えるアプリ、そしてデザインツールであるCanvaを使った方法まで、三つのパターンに分けてご紹介します。ご自身の制作環境に合わせて、参考にしてみてください。
本格的な漫画制作ツールを使う場合
もしあなたが本格的な漫画制作を目指すなら、Clip Studio Paint、通称クリスタのような専門ソフトを使うのが最もおすすめです。フキダシ作成やテキスト入力のために作られた機能が豊富で、思い通りの演出が可能です。ここではクリスタを例に、手順を説明します。
まず、ChatGPTやGeminiで生成したイラストを、クリスタのキャンバスに読み込みます。
次に、ツールパネルからフキダシツールを選びます。フキダシツールには、楕円フキダシやフキダシペンといった種類があり、ドラッグするだけで簡単にフキダシが作れます。フキダシのしっぽも、後から自由な形に調整できます。
フキダシが作れたら、テキストツールを選び、フキダシの中をクリックしてセリフを入力します。文字の大きさやフォントの種類、縦書きか横書きかも、この時に設定します。クリスタの強みは、ここからの微調整が簡単なことです。フキダシの線の太さを変えたり、フチをつけたりして、絵の雰囲気に合わせることができます。
スマートフォンアプリで手軽に作る場合
パソコンを持っていない、あるいはもっと手軽に作業したいという方には、ibisPaint X、アイビスペイントのようなスマートフォンアプリが便利です。無料でありながら、漫画制作に必要な機能が一通りそろっています。
クリスタの時と同じように、まずAIが生成したイラストを読み込みます。アイビスペイントでフキダシを作るには、図形描画ツールやペンツールを使って一から描く方法と、アプリ内に収録されている素材を使う方法があります。オリジナリティを出したい場合は直接描き、手軽に済ませたい場合は素材を選ぶと良いでしょう。
フキダシを置いたら、文字入れツールでセリフを入力します。アイビスペイントも様々なフォントを追加できるので、好みのフォントでセリフを入れましょう。
デザインツールで作る場合
一枚絵の漫画や、SNS投稿用の画像であれば、デザインツールであるCanvaを使うのも一つの手です。漫画制作の専門ツールではありませんが、手軽におしゃれな雰囲気を出せるのが魅力です。
CanvaにAIが生成したイラストをアップロードします。次に、素材メニューから円や四角といった図形を選び、フキダシの土台とします。図形の色を白にしたり、枠線だけを残したりして調整します。
最後に、テキストボックスを追加してセリフを入力します。Canvaはデザイン性の高いフォントが豊富なので、イラストの雰囲気に合わせて選ぶのが楽しいです。
フキダシは描かなくてもOK 素材を活用しよう
これまでは、各ツールでフキダシを描く方法を中心にご紹介しました。しかし、毎回一から描くのは大変、と感じる方もいるかもしれません。
そんな時に心強い味方になるのが、フキダシの「素材」です。素材を使えば、ドラッグアンドドロップするだけで、プロが作ったような綺麗なフキダシを配置できます。
例えば、Clip Studio Paintには、公式の素材配布サイト「CLIP STUDIO ASSETS」があります。ここには、世界中のクリエイターが公開した、膨大な数のフキダシ素材があり、その多くを無料で使うことができます。
また、Canvaにも、グラフィック素材の中に様々なデザインのフキダシが含まれています。デザイン性の高いものが多いので、イラストの雰囲気に合わせて選べます。
もちろん、インターネット上には、漫画制作用のフリー素材を配布しているサイトもたくさんあります。利用規約をよく確認した上で、活用してみるのも良いでしょう。
フォント選びの考え方とおすすめ
フキダシの準備ができたら、いよいよ最後の仕上げ、フォント選びです。フォントは、作品全体の雰囲気を決定づける、非常に奥深い要素です。ここでは、数あるフォントの中から、何を基準に選べば良いのか、そして具体的なおすすめフォントは何かを、私の経験を元にご紹介します。
私もハマったアンチック体の沼
漫画の基本フォントはアンチック体、とよく言われます。しかし、いざフォントを探してみると、このアンチック体だけでも本当に多くの種類があって、私も最初はどれを選べばいいか非常に悩みました。少しの違いが、作品の印象を大きく変えてしまうからです。
大前提 最後はあなたの好みが正解
そこでまず、大前提としてお伝えしたいことがあります。それは、フォント選びに絶対の正解は無い、ということです。この記事でご紹介するのは、あくまで多くの漫画で使われてきた実績のあるフォントや、特定の感情表現に適したフォントです。
最終的には、ご自身の作風や、読者にどう感じてほしいかという、あなたの好みと狙いで選ぶのが一番です。この記事を、そのための基準を見つけるヒントとしてご活用ください。
基準となる二つの定番フォント
その基準として、私が特におすすめしたい定番フォントが二つあります。
一つは、Web漫画や同人誌で人気が高く、親しみやすい雰囲気を持つ「F910 新コミック体」です。私も現在、このフォントを愛用しています。
もう一つは、よりオーソドックスで、商業誌のような落ち着いた印象を与える「I-OTFアンチックStd B」です。こちらはクリスタEXをお使いであれば、標準で入っているためすぐに試すことができます。
シーン別 おすすめフォントの具体例
基本の会話には、先ほど紹介した「F910 新コミック体」や「I-OTFアンチックStd B」を、作風に合わせて使い分けるのが良いでしょう。
シリアスな場面やナレーションでは、硬質で知的な印象を与える明朝体のフォントが向いています。「源暎こぶりな明朝」のようなフォントは、物語のナレーションや、キャラクターの真剣なモノローグに最適です。
叫びやインパクトを表現したい時は、力強いゴシック体や、デザイン性の高いフォントが向いています。「源界明朝」や「ラノベPOP」といったフォントは、叫び声や驚きを効果的に演出します。
恐怖やホラーの雰囲気を出すには、専用のホラーフォントが効果的です。私が試した中では「g_コミックホラー恐怖」のようなフォントが、震えるような恐怖からおどろおどろしい雰囲気まで表現できました。
最後に、特にフリーフォントを作品で使う場合は、商用利用が可能かどうか、ご自身でライセンスをよく確認することをおすすめします。
よくある質問
最後に、AI漫画でフキダシやセリフを入れる際、多くの方が疑問に思うであろう点について、いくつかお答えします。
ChatGPTで画像に日本語を入れると文字化けするのはなぜですか
これは、AIが画像を生成するモデルの仕様上、日本語フォントをまだ完全にはサポートしていないために起こる現象です。
ちなみに、上級者向けの方法として、ChatGPTのチャット入力欄に直接日本語フォントファイルをアップロードし、そのフォントを使って画像に文字を描画させる方法も存在します。
しかし、この方法については、技術的に可能でAIの可能性を感じさせる面白い試みではあるものの、作品のクオリティと作業効率を考えると、まだ発展途上だと言えます。フキダシの形に合わせた微調整などが難しいためです。
そのため、多くの方にとっては、本記事でご紹介したように、AIにはイラスト生成に集中してもらい、文字は後から専門のツールで入れる方法が現時点では最も確実です。
この記事の方法で作った漫画は商用利用できますか
これは非常に重要な点です。答えは、使用するAI、ツール、フォント、素材のそれぞれの利用規約によります。
例えば、AIの生成物については、利用するAIサービスの規約で商用利用が許可されているかを確認する必要があります。また、フォントやフキダシ素材も、それぞれにライセンスが定められています。商用可とされているものであれば問題ありませんが、個人利用のみに限定されているものもあります。
公開や販売を考える際は、必ず一つ一つの要素について、ご自身で利用規約を確認することが不可欠です。
AIが作った絵のテイストとフキダシが合いません
絵の雰囲気にフキダシが合わないと感じる時は、フキダシの線の太さや色を調整するのが効果的です。例えば、繊細なタッチのイラストであればフキダシの線も細く、逆に力強いイラストであれば線を太くすると馴染みます。
また、クリスタのようなツールでは、フキダシにフチをつけたり、線の質感をアナログ風に変えたりすることもできます。色々試して、ご自身の絵に最適な表現を見つけてみてください。
おわりに
この記事では、AIで生成したイラストにフキダシとセリフを入れるための、基本的な考え方と具体的な手順をご紹介しました。
AIは非常に便利なツールですが、最終的にキャラクターの感情を表現し、セリフに実感を込めるのは、作り手である私たち自身です。AIが出してくれたアイデアに少し手を加えるだけで、作品は見違えるほど良くなります。
この記事でご紹介した内容が、あなたの作品作りのヒントになり、創作活動がより楽しいものになるきっかけになれば、嬉しく思います。
AIが作った素晴らしいイラストに、あなたの言葉を乗せて、ぜひ作品を完成させてみてください。
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